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桃とラベンダー

天使の粉だけ 食べて生きるの

真っ白な世界から飛び出して

今週のお題が「人生に影響を与えた1冊」だそうです。なのでファウストの話をしますね。別にお題じゃなくてもするけどね。いまわたし小西訳と池内訳の通読ターンなのですが、小西訳の森と洞穴から井戸のほとりまでのくだり本当に最高だからみんな読んだらいいよ~!!!

 

ファウスト

ファウスト

 

 

こころ さわぎ
胸は重い
やすらぎは、もう
もどりはしない。

あの方なしでは
お墓とおなじ
世のなか、なにもかも
いやになった。

あわれな頭は
狂ってしまい
あわれな心は
もうずたずた。

 

 

マルガレーテの清純さに当てられて博士が洞穴に引きこもっている(クズ)あいだ、ファウストを恋しく思いつつも自らに生じた不安をマルガレーテが歌うシーンなのだけど、これから彼女に待ち受ける悲劇的な結末を予感させつつも、それでもこの一瞬の歓びに胸を躍らせる純粋な欲望が愛らしくも切なくて、その可愛らしさは小西訳が一番出てるんじゃないかなぁ~って思うんだよね!森鴎外訳とか高橋義孝訳も美しくてうっとりするんだけどね!あと劇中のマルガレーテの歌に通じるところがあるよね!多分ここからきてるんじゃないかと思うんだよね!まあ多分違うんだけどね!!!

 

 

やっと出会えた 天命の人に


離れた時から貴方が欲しい


その目 その鼻 その口と声


貴方の姿が褪せないように


静かに目を閉じたまま 貴方を待つ


もう他のものは見たくないわ


この瞳に映ることが出来るのは


貴方だけ ファウスト

 

ファウスト

 

 

 

あとミカエル(ガブリエル)と一緒に歌う「愛の囁き」。これは初演・再演ともにパンフレットに歌詞が載っているのでそっちを参照してほしい。「あなたを知るまでこの世界は色褪せていた」と歌い、苦しみから安らぎ、幸せから絶望へと愛を歌う。とても綺麗な歌。八坂さんの透き通った歌声も、玉置さんの凛とした歌声もどちらの響きも違う愛を彩っていて、とても魅力的だったなぁ。初演では大阪公演から歌い始めた真っ白な世界~の歌も、八坂さんの綺麗ですこしキンとする歌声が切に迫ってて良かったし、玉置さんの全てを飲み込むように歌う重々しさもよかった。とてもよかったんだよマルガレーテ。

ファウストと出会い篭の鳥であった少女は新しい世界を知る。原作では母と兄の庇護のもとで、劇中では王女として父王と兄の庇護のもとで汚れなき少女であったマルガレーテは、愛によってその身を滅ぼす。こんなに若いのに、と震える声で嘆く八坂さんの演技は今でも耳の奥に残っている。あの八坂さんの演技が好きで、そしてそれに対してこの世の終わりみたいな顔をする河合くんが、本当に悲しいほどに可哀想で、綺麗で!あぁ、ちゃんとあの歌の通りになったね、っていう、可愛そうなおとぎ話。このシーンのマルガレーテの台詞はもろに「牢獄」のマルガレーテだから読み返す度に辛い。「だけどーーここまであたしを引っぱってきたものは ああ! なにもかもすてきだった! よかった!」*1

 

「愛の囁き」で王女マルガレーテは「いつまでもあなたを待ち続ける、もうあなたなしでは生きられない」と歌い、物語はここから悲劇の階段をひたすら下ることになるのだけど、未来よりも今を選んだしまった少女の刹那的な美しさを彩る、劇中屈指の名シーンであったと思う。五関さんと河合くんが剣と剣とを重ねる姿の美しさと相まって、ひたすらに美しい地獄。

 

この胸は、ひたすら
あの方をもとめる。
ああ、しっかりつかまえ
抱きしめて

キスしたい
思いっきり
キスで、命が
絶えたっていい!

 

 


ということで結局、相も変わらずファウストを読んでいます。まだ飽きないもんだからしょうがないよね。サマパラ後に色々あって*2その間に何だかんだあって我が家の本棚がこんなことになりました。

 

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ご病気の様子。

 


そのくせファウストの魅力を教えて!と知人に聞かれても答えられないわたしなのですが、そもそも何かの魅力について語るってことがわたしはとても苦手なのです。とある事柄について「○○だから好き!」と語る、の○○が魅力に当たる部分だと思うんですけど、そこの○○をうまく明文化出来ないというか、纏められないというか。好きなところはむにゃむにゃなんとか、みたいに列挙していくことは出来なくはないんだけど、でもその好きなところって昨日今日明日できっと違うことをわたしは言うし、その全てが本当だし、わたしの頭の中はいい年して全然まとまりがないし。
そんなわけでわたしは好きなものについて誰かにプレゼンするということがド下手でいけない。好きな気持ちはもちろんあるけど、言葉にしたそばから陳腐な嘘になっていく気がする。いちヲタクの説明なんかいいから、気になるなら自分で触れてみてほしいって思う。ていうかそもそも魅力なんて誰かに聞くもんじゃないじゃろ!手前で感じて掴み取れ!!*3

こんなことばっかり言ってるからヲタ友がいないのだなぁ!!

*4

 

ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

 

 

*1:「井戸のほとり」マルガレーテの独白

*2:担当役者とツーショットを撮って一度死ぬなど

*3:ヲタクとして敗北しきった発言である。

*4:これは池内訳