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桃とラベンダー

天使の粉だけ 食べて生きるの

再演ファウストについて、悶々と考えていること

明日でとうとうファウスト再演が東京楽です。今のところ3回見てるけど、3回とも河合君は美しくて貴くて素敵です。特に終盤の汗で前髪が張り付いているお顔を正面に向けて、スポットライトを浴びてテーマソングを歌う河合郁人君はトップスターだなって、これはもう毎回思うんで多分明日もそうだと思うんですけど、本当に大きな羽を背負って見えるんですよ。かわいくんは、わたしにとってそういう人なんだなって再確認しました。わたしにとってかわいくんが世界一なんだってことです。

 

ところでわたしは初演ファウスト手塚治虫ゲーテファウストを解体して日本的に再構築したものを、更に無神論的人間賛歌の意味合いを持たせて造り上げられた母子神話だと思ってるんだけど、今回の再演でも残っていた部分を鑑みるにやっぱりテーマは人間の二面性(善/悪)への赦しなんじゃないかなって思うわけです。

天使と悪魔が心中して一つになることは、即ち善悪が二分されない人間という存在を認めるということなのでは、と。で、今回はその二極対立構造に男女、も付け加えられるんだと、再演で女体化すると聞いて、わたしはそう思っていたんだけどそれがあんまり感じられなかったのが残念だなと思います。フェミ的要素を入れてくるんじゃないか、と思ったんだけどな……。

 

あと王家の人々の設定改変がね、少し残念……なぜならわたしは初演の、箱入り王子さまで何もせずに順当にいけば国王になれるはずだったのにファウストが現れてかわいい妹の心を奪った上に地位まで脅かされることによって、平和に生きてきたが故に心優しい坊ちゃん王子様が欲に負けて悪い顔に変わっていくところが好きで、そんな王子様とファウストの決戦は、常に受け身で流されてきた二人がそれぞれ目の前の欲望を自ら選んで掴んだ結果起こる悲劇、という構図がとても美しくて意味のあるものだったので、好きだった。なのでここの設定が変わってしまったのは少し残念だな、と思って。もう一度見られるかと思っていたので。

 

あともう一つ残念なのは、メフィストフェレスが願いをかなえる数を3つと限定すること。ランプの魔人かよ、というのはさておき、この限定のせいでラスト、ファウストが請うてもマルガレーテを救わないメフィストがただ嫌がらせをしているみたいでなんか嫌だなって思った。カウントダウンの面白さってのはあると思うけど、ファウストってやっぱ人間の欲に振り回される悪魔の構図が面白いものだと思うし、ここは数を限定する必要ってあったのかなって思う。ラストにメフィストがマルガレーテに手出しできないのは気が触れて神の領域にイッてしまった彼女を前に悪魔が無力だからだと思うし、だから初演では「もはや人ではない」って言うんじゃないの?悪魔は人間と契約できるけど、人でないものはどうすることはできないってことじゃないの?ここを変えた意味は何なんだろうなぁ。

 

初演と再演で共通しているのはメフィストが人間に悪魔と呼ばれることを嫌っていること、人間には価値がないと信じていたメフィストファウストの生き様を通して「人間は素晴らしい」と改心すること、ファウストメフィストフェレスを悪魔と呼ばなくなること、ファウストの忘却をメフィストが責めること。(本家では精霊(たぶんメフィストの計らい)に癒されてマルガレーテに関わる悲劇全てをすっぱり忘れるファウストだけど、こっちではメフィストが「お前は忘れるんだ」って責めて、それに対してファウストは「俺は忘れたりしない!」って言うのが面白いなって思う。)この辺が多分、作り手のどうしても譲れないところだと思うので、今回の追加要素はそれを分かりやすく伝えるためにあるはずなんです。ただわたしがうまくそれを咀嚼できていないので、残り2回で出来るかなぁ……。。

 

何はともあれ、明日で東京楽。そして大阪公演です。どういう舞台に育つのかを見届けてヲタクとして満足して死にたいと思います。

 

 

 

どうでもいいけど、再演ファウストで追加された要素(妹とか女体化とか)があんまりにもよくわからなかったからそれでひとつ遊んだものを書いたんだけど、一応ネタバレものだから限定公開にしてあり(多分Twitterで相互のひとは見られるはず)、今日ひさびさに会った姉にそれを見せたら「元気だね」って言われました。そうです、わたしは元気です。

 

 

追記

何で3つって限定したんだろう、って書いたけど百物語では願い事の数が3つなんだったね。だからそっちに寄せたんだね。

ファウストのキャラやストーリーの筋はファウストより百物語のほうが近いからそうしたんだろうけど、百物語では最初に三つ願いを全部言って、その成就のために生じるあらゆる試練にスダマの力を借りて打ち勝っていくわけだけど、場当たり的に悪魔の力を借りるのはファウストの方で初演でもそういう感じだったから、3つってする必要はやっぱり無かったんじゃなかろうか??百物語的展開(メフィストに情けないと叱責されて改心して成長するなど)を削っているのだし……と、改めて百物語を読み返して思いました。スダマちょーかわいい。あと改めて、あのものすごい話をあんな短編「ファウスト」にまとめ上げる手塚治虫って天才なんだな(今更)。

 

 

ファウスト (朝日文庫)

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